「東大キャンパスにベジメニューを導入!ヴィーガン歴10年のタン・ブンチュウさん」
欧米の学校が次々にベジタリアンメニューを導入する昨今、日本でその第一号となったのは東京大学でした。導入に働きかけて下さったのは、東京大学大学院工学系研究科に在籍しているタン・ブンチュウさんと、アメリカからの留学生でした。
タンさんもマレーシアの大学を経て、文科省の奨学生として東大に入学されました。4ヶ国語が堪能で、卒業後は日本の会社で建築士を目指すという才能溢れるタンさんに、今回お話を伺いました。
VM 「タンさん、まずはベジタリアンメニュー導入、ありがとうございました!素晴らしい功績ですね!後に続いた京大、そしてこれから続く大学にもいい刺激を与えてくれたと思います。
タンさんご自身はどのようなきっかけで菜食をしようと思われたのですか?
」
タン「17歳のときで、いろいろな本を読んでいたことが背景にあったのだと思いますが、直接のきっかけとなったのは猫でした。猫のように簡単な動物生活を見て、人間はいろいろな資源を駆使して複雑な現代生活を送るようになりましたが、もっと簡単な生活に変えると幸せになるのかもしれないと思い、菜食に変えました。」
VM 「猫ですか!猫を見て食事を変えようなんて発想には普通の人は至らないですよね。日本とは違う環境なのだと思いますが、ご家族が菜食とか、文化的な背景はあったのですか?」
タン「いえ、家族は誰もベジタリアンではありませんでした。確かにマレーシアには菜食文化があり、お坊さんたちは菜食ですが、うちは無宗教ですし、宗教的な理由はありませんでした。猫を見ていて、ふとそういう考えが降りてきたというか、日本語で何と言うか、英語ですと“epiphany(=〔本質・意味についての〕突然のひらめき)”とか“eureka(=〔探していたものが〕見つかった!わかった!)”という感覚が近いです。」
VM 「さすが、すごい言葉をご存知ですね!17歳で猫を見ていてそんなことがひらめくとは、やはりタンさんは天才なのだと思います!」
タン「いえいえ。ただ、当時はそういう、つまり動物を殺さないで済む菜食にしようと思ったわけですけど、今は違う考えで菜食をしています。」
VM 「えっ、今はどういうお考えなのですか?」
タン「住んでいる土地や環境によって、誰もが菜食できるわけではないと思うのです。また健康面では、食事だけでなく運動も必要な要素だということもありますが、肉食でも健康な人もたくさんいますし、菜食にすれば必ず健康になるかというと、そうとは限らないと思うのです。もちろんそれは食べ方に問題があるのかもしれません。お肉をやめるならそれなりのたんぱく質を十分とったりなど、偏らない食べ方が必要ですし、もちろんそれは肉食にも言えることなのですが。
そこで僕の考えでは、お肉も少しだったら健康でいられるけど、あるレベルを超えると不健康になるとか、環境的にもこのレベルまでだったら環境を維持できるが、その線を超えると環境破壊になるなど、平均値のようなものがあると思うのです。
しかし現代人はあきらかにその平均値を超えています。その平均値を下げるためには、平均値を超える人に説得して、ちょっとでも動物製品の消費量を下げてもらうか、自主的に下げようとしたい人が自ら動物製品の消費量を大幅にカットする、ないしゼロにするかしかないでしょう。もちろん、下げたい人より下げたくない人の方が多いし、下げたくない人に説得するよりも、とりあえず自分からカットした方が簡単にできるから、まず自分から始めるというのが、今自分が菜食でいる理由です。」
VM 「そうなのですか!難しいお考えですね。全体を視野にいれてご自身のポジションを取られていらっしゃるのですね。こういう理由で菜食されている人は初めて聞きました。
ということは、もし動物製品の消費量が先ほどの平均値を下回ったら、タンさんは肉食を始められることもあるのですか?」
タン「理論的にはそうですけど絶対ないですね(笑)。なぜなら、僕が生きているうちに、動物製品の消費量がその平均値を下回れるとは思えないからです。」
VM 「そうでしょうね(笑)。
ところでその平均値についてですが、お肉は少しなら健康には害がない、とも言えるのかもしれませんが、全く食べないことで多くの病気が治っているという報告があります。ですので平均値に拘らずに食べないままでもよいのではないでしょうか?」
タン「確かにお肉の食べ方によって、健康を害することになることが多々あります。それは大量な需要に応えるために生まれた工場畜産という飼育方法や加工過程が、肉を悪物にしたのだと思います。」
VM 「なるほど、そう考えられる方もいらっしゃるのですね。工場畜産に対する問題意識が高まっている欧米諸国では、消費者がお肉や卵がどのような工程で作られたかを重視するようになったと聞いています。日本の畜産農家の方々にも生産方法の改善を図ってほしいですし、私たち消費者の意識も高まらなければいけないですね。」
VM 「最後に、週に一日菜食にしようというベジーマンデーについてお考えをいただけますか?」
タン「先ほど人を説得するか、自ら動くかしかないという話に戻ることになりますが、平均値を下げたい意識のある人だけでは微力なので、結局皆さんの協力が必要です。つまり、少ない人数が極力減らすよりも、皆で一緒に少しだけでも減らした方が効率的でしょう。ベジマンデーというコンセプトはそうだと思います。週に一日ないし半日なら誰でもできるとても簡単なことなので、素晴らしいアイデアだと思います。是非多くの方がこうした問題に気づき、この運動に参加してほしいですね。」
VM 「タンさん、ありがとうございました。今後のご活躍を楽しみにしています!」
タン「こちらこそありがとうございました。」
〜〜インタビューを終えて〜〜
東北大震災の際は春休みを利用して、3週間仙台にお掃除ボランティアに行っていたというタンさん。その後も動物のシェルターを建築したいと、勉強のためにシェルターに見学に行き、そこでボランティアもされていたそうです。
頭脳明晰、ボランティア精神にも溢れた素晴らしい若い男性が日本に留学して下さり、そして日本初となった大学の食堂にベジタリアンメニューを導入してくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。今後のタンさんのご活躍をお祈りしています!
(2015.2.15)
【ベジプロジェクト・ジャパン】
【東京大学ベジプロジェクト】
【京都大学ベジプロジェクト】
【一橋大学ベジプロジェクト】
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